DXの第一歩は「業務フローを描いて観察すること」から始まる
こんにちは!シェルシステムです。
私たちは普段、システム開発だけでなく「何から手をつければいいか分からない」という状態のお客様の業務改善をゼロからお手伝いすることがあります。

「DXを進めたいけど、そもそも何が課題なのか整理できていない」
「改善したいけど、どこから始めればいいのか分からない」
このような相談を数多く受ける中で、成功する企業と失敗する企業には、ある明確な違いがあると思っています。
この記事では、多くの企業が見落としがちな「最初の一歩」について整理し、具体的な業務改善の進め方をご紹介します。
なぜ多くの業務改善は失敗するのか?
「DXを進めたいけど、何から手をつければ…」
「現場から『とにかく何とかしてくれ』と言われるが、具体的な問題が分からない」
「高価なツールを導入したのに、業務が楽にならない…」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
実は、これらの失敗には共通のパターンがあります。
現場と経営層の認識のズレ、改善の目的が不明確なまま進めてしまうこと、成功事例をそのまま真似してしまうことなど、複数の要因があります。
その中でも、最も多いのが自社の業務の現状を把握しないまま、改善策やツールの導入に走ってしまうことです。
この状態で進める業務改善が失敗する理由を3つご説明します。
【失敗例1】:ツール導入が目的になってしまう
DXとは、AIや最新システムを導入することではありません。
「残業時間を20%削減する」「受注から納品までを3日短縮する」といった目的を達成するために、業務を見直し、必要に応じてデジタル技術を活用することです。
「AIが流行っているから」「他社が使っているから」という理由でツールを導入しても、現状把握ができていなければ、目的と現状のつながりが不明確になります。
結果として「高額なツールを導入したのに何も変わらなかった」という失敗につながります。
【失敗例2】:改善の範囲が曖昧になり、効果が出ない
現状把握ができていないと、改善すべき業務の境界線が見えなくなります。
「どこからどこまでが対象業務なのか」「誰が関係しているのか」「前後の業務にどう影響するのか」といった改善範囲が定義できません。
例えば、営業部門の見積作成業務を改善しようとしても、実際には経理部門の請求処理や、製造部門の在庫確認など、複数の部署が密接に関わっていることがよくあります。
この全体像が見えていない状態で改善を進めると、一部分だけを効率化しても、その前後でボトルネックが発生したり、かえって他部署の負担が増えたりすることがあります。
結果として、部分的な修正に終わり、部署間の連携などの大きな問題が見過ごされます。この状態では、本質的な業務改善は実現できません。
【失敗例3】:無駄な業務をそのままシステム化し、費用が高くなる
現状分析がないと、「今の業務のやり方をそのままシステム化したい」という発想になりがちです。
しかし、今のやり方にはシステムを導入する上では無駄や非効率なプロセスが含まれていることがほとんどです。
無駄な業務をそのままシステム化することは、非効率な作業を高速化するだけで、根本的な解決にはなりません。
業務プロセスを見直せば安価なパッケージソフトで対応できたはずが、現状の複雑な業務に合わせて不要なカスタマイズを重ねた結果、開発費用が膨れ上がってしまいます。
さらに、複雑なシステムは保守費用も高額になり、将来的な変更も困難になるという悪循環に陥ります。
業務フローを作成することで失敗を回避できる
これらの失敗を避け、DX・業務改善を成功に導くために必要なのが「業務フローの作成」です。

参考: https://smbiz.asahi.com/article/15076587
業務フローで可視化をすることで、3つの大きなメリットが生まれます。
【メリット1】:関係者全員の共通認識が生まれる
最大のメリットは、関係者全員が業務の全体像を正確に把握できることです。
例えば「請求業務を改善したい」という議題があったとき、営業部長の考える「請求業務」と経理担当者の考える「請求業務」では、指している範囲や課題感が全く違うことがあります。これでは議論が噛み合いません。
業務フローを作成することで、こうした見えないズレを解消できます。
「Aさんはこう思っていたが、Bさんは違うやり方をしていた」といった違いや、そもそも認識していない業務があったなど業務の全体像が、経営者から現場担当者まで全員に共有されます。
共通認識がないまま改善を進めると、「聞いていた話と違う」「前の方がやりやすかった」といった反発が生まれ、改善が頓挫する原因になります。
全員が同じ絵を見て「なぜ変える必要があるのか」を納得するところから、本当の改善がスタートします。
【メリット2】:本当の課題が見つかる
業務フローの整理は、まだ発見できていない「本当の課題」を見つけることに役立ちます。
「なんとなく非効率だ」という漠然とした問題意識では、的確な打ち手は考えられません。
業務フローを客観的に眺めることで、以下のような具体的で数値化できる課題が見えてきます。
- この手作業に毎日30分かかっている
- この承認プロセスは本当に必要か
- 部署間のデータ連携で毎回手入力が発生している
個人の感覚や声の大きい人の意見に流されるのではなく、事実に基づいた課題発見が可能になります。
これにより「とりあえずRPAを導入しよう」という安易な結論ではなく、「この手入力作業を自動化すれば月間〇〇時間の削減が見込める」といった根拠のある改善策を立案できます。
【メリット3】:改善効果を測定できるようになる
業務フローは改善活動の成績表を作るための土台となります。
改善前の現状(As-Is)があるからこそ、改善後のあるべき姿(To-Be)と比較して、作業時間の短縮やコスト削減を具体的に測定し、投資対効果(ROI)を算出できます。
測定をしていない状態で改善を行なっても、何がどれくらい良くなったのかはよく分かりません。
効果測定により「今回のシステム導入は成功だった」「次は〇〇を改善しよう」という次のアクションにつなげることができます。
また、経営層に対して「これだけの投資でこれだけの効果が出ました」と明確に報告でき、さらなる改善への予算や協力を得やすくなります。
業務フローから課題を特定し、改善仮説を立てる
ここまで、業務フローを作成することの重要性とメリットをお伝えしてきました。
ここからが改善活動の本番ですが、成功のために押さえておきたい重要なポイントがあります。
それは「現状の業務へのリスペクトを持つこと」です。
フローを見ると「この作業は無駄だ」と思うかもしれません。
しかし、その業務は今日まで会社の事業を支えてきました。
そこには過去の経緯や、その方法が必要だった理由、先人たちの知恵や工夫が必ず存在します。
この敬意を忘れると、現場の担当者から「自分たちの仕事を否定された」と反発を招き、改善活動への協力が得られなくなります。
「今までのやり方の良い点はどこか」「その上で、もっと良くするには何ができるか」という視点を持つことが、関係者を巻き込み、建設的な議論を進める土台となります。
重要なのは、いきなり大規模なシステム開発に乗り出すのではなく、小さく試してみることです。
一部の部署で新しいツールを試験導入したり、Excelマクロで簡単な自動化を試したりするなど、低コストで始められることから着手します。
ここに対して「仮説→実行→検証」のサイクルを回すことで、リスクを最小限に抑えながら着実に業務改善を進めることができます。
まとめ
DX・業務改善を成功させるための「最初の一歩」は、業務フローを作成し、現状を正確に把握することです。
業務フローを作成することで、関係者全員が共通認識を持ち、本当の課題を発見し、改善効果を測定できるようになります。
そして、現状の業務へのリスペクトを持ちながら、小さな改善から着実に成果を積み重ねていく。これが、持続可能で効果的な業務改善の進め方です。
もし「自社だけでは難しい」「客観的な視点が欲しい」と感じたら、ぜひシェルシステムにご相談ください。豊富な経験を持つ私たちが、業務改善を全力でサポートいたします。
