Case Study
材積測定業務の構造改革に向け、AR測定支援システムの要件定義を策定 ―「人が責任を持つ市場原則」を守りながらDXへ―
木材市場運営会社様

背景・課題
①材積測定(検知)業務が竹尺による手作業・2人体制で行われており、高い工数と人依存が課題となっていた。 ②仮検知・本検知の2回測定や手入力によるデータのズレなど、業務フロー上の非効率が常態化していた。 ③効率化を進めたいが、山主との信頼関係やJAS規格準拠など、木材市場ならではの業務原則を守る必要があった。 ④人手不足と高齢化が進む中、従来型の属人的業務に依存し続けることは将来的なリスクがあった。
成果・効果
①材積測定業務の全工程を可視化し、課題と業務上の制約を体系的に整理した。 ②既存の画像認識技術の実証実験を行い、技術的な適合性を客観的に評価した。 ③「人間の判断を支える測定支援システム」の設計方針のもと、ARシステムの要件定義を策定し、開発フェーズへの道筋を整備した。
導入前に抱えていた課題
当社は、木材の競り市を運営する木材市場として、山主様から預かった荷を正確に測定し、公正に評価することを何よりも大切にしてきました。その信頼を支えているのが、竹尺を使って1本1本丁寧に測定する検知業務です。
しかし、この測定業務に大きな負担がかかっていました。本検知は2人体制で、1人が竹尺で直径を測り読み上げ、もう1人がタブレットに入力するという手作業です。仮検知と本検知の2回にわたって測定を行う必要があり、作業時間と人手の確保が恒常的な課題でした。
また、再計測の発生や山の移動に伴うデータのズレなど、運用上の問題も抱えていました。
効率化の必要性は感じていましたが、木材市場の業務には長年守ってきた原則があります。山主様との信頼関係、人間による最終判断と説明責任、セリでの視認性の確保、JAS規格への準拠。これらを損なうような仕組みは導入できません。効率化と業務原則の両立をどう実現するか、専門家の知見を借りて検討を進めることにしました。
依頼を決めた理由
材積測定の効率化を考えたとき、画像認識やAIなどの技術的な選択肢があることは知っていましたが、木材市場特有の業務に本当に適用できるのか、自分たちだけでは判断がつきませんでした。
シェルシステムさんに依頼したのは、まず現場をしっかり見て、業務を理解した上で最適な方法を一緒に考えるという進め方に共感したからです。
最初からシステムありきではなく、業務フローの可視化と課題整理から始め、実証実験で技術の適合性を客観的に評価し、その結果に基づいて方針を決めるというプロセスに信頼感がありました。
単なるシステム導入ではなく、「業務構造そのものを整理するプロジェクト」として進める必要があると考えました。
取り組んでみての感想
約7ヶ月にわたるプロジェクトでしたが、一つひとつ段階を踏んで進めていただいたことで、納得感を持って取り組むことができました。
まず印象的だったのは、現場の業務を深く理解しようとする姿勢です。材積測定の全工程を丁寧にヒアリングし、業務フローとして可視化してくれました。
さらに、山主様との信頼関係やセリの形式維持など、当社が大切にしている業務原則をシステム設計の前提条件として明確に位置づけてくれたことが心強かったです。
既存の画像認識ツール(Timbeter)を使った実証実験では、実際に複数の山を対象に精度検証を行い、「使えるところ」と「使えないところ」を客観的なデータで示してくれました。
結果として本検知にはそのまま適用できないという結論になりましたが、根拠が明確だったので次のステップにスムーズに進めました。
最終的にARシステムという方向性が決まったときも、AIシステムとの比較表やコスト試算を見ながら一緒に検討できたので、経営判断として自信を持って選ぶことができました。
モックアップで画面イメージを確認しながら要件を詰めていく進め方も、現場にとってわかりやすかったです。
技術導入ありきではなく、検証を通じて「適用できる範囲」と「現時点では難しい領域」を整理できたことが、大きな成果でした。
取り組みの結果
【定量的な成果】
- 業務フローの可視化: 材積測定業務の全工程のフロー図を作成
- 実証実験の実施: 5つの山(計377本)を対象に画像認識技術の精度検証を実施
- アプローチの比較検討: AIシステム・ARシステムの2方式について技術・コスト・業務適合性を評価
- 要件定義の策定: ARシステム・検知管理ソフトの画面設計・機能要件・開発コスト・スケジュールを具体化
- 業務フロー改善の決定: 検知業務の2回(仮検知・本検知)から1回への統合を決定
【定性的な変化】
最も大きな成果は、「何を守り、何を変えるか」が明確になったことです。
木材市場として譲れない業務原則を全員で共有した上で、効率化すべきポイントと具体的な手段が整理されました。
「人が見て、人が判断し、人が責任を持つ」という原則を維持しながら、測定と記録の効率を高めるという方向性に、経営層・現場ともに合意が得られたことで、次の開発フェーズへ安心して進める土台ができました。
お客様の声
上記の取り組みに関して、担当者様から直接コメントもいただいております。
今回のプロジェクトを通じて最も大きな収穫は、「技術を導入すること」ではなく、「自分たちの業務の本質を言語化できたこと」でした。
木材市場においては、公正さと信頼が何より重要です。効率化を進めながらも、その原則を守れるのかという不安がありました。
シェルシステムさんは、現場の業務を丁寧に理解し、「何を守るべきか」を一緒に整理してくれました。
その上で、AI・ARなどの技術を冷静に比較し、使えるもの・使えないものを客観的に評価していただき、大きな信頼感を持つことができました。
結果として、「人が判断し、人が責任を持つ」という市場原則を維持しながら、測定業務を支援するARシステムという方向性を選択することができました。
技術導入の前に業務構造を整理する――このプロセスそのものが、今回の最大の価値であったと感じています。
業務改善にお困りではないですか?
「どこから手をつければいいかわからない」「まず現状を整理したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
