2025年12月1日
5分

AIエージェントで業務を自動化!仕組み・活用シーン・導入判断のポイントを解説

5分

こんにちは、シェルシステムです!

月曜の朝、出社してメールを開くと未読が30件。

その半分は「先週の会議の議事録ください」「この請求書の処理どうなってますか」といった確認や催促。返信しているうちに午前中が終わり、午後には会議が3本…
気づけば本来やりたい業務ができないまま、一日が終わってしまう。

こんな経験ありませんか。

問い合わせ対応、議事録作成、経費精算、データ集計。
どれも必要な仕事ですが、「これ、誰かに任せられないかな」と思うことも多いはずです。

そんな「誰かに任せたい仕事」を本当に任せられる存在として注目されているのが「AIエージェント」です。
本記事では、AIエージェントとは何か、何ができて何ができないのか、導入を検討する際のポイントまで解説します。

なぜ今「AIエージェント」が注目されているのか

最近「AIエージェント」という言葉をよく耳にするようになりました。
技術の進化と社会の変化が重なり、実際の業務で活用する企業も増えてきています。

生成AIの急速な進化

2022年末にChatGPTが登場して以来、AIの言語理解能力は飛躍的に向上しました。
当初は「質問に答える」だけだったAIが、今では「状況を判断して、次に何をすべきか考える」ことができるレベルに達しています。この進化がAIエージェント実用化の土台になっています。

人手不足という現実

2025年、日本は国民の5人に1人が75歳以上という超高齢社会に突入しました。
多くの企業が人手不足に直面し、「今いる人員で、より多くの仕事をこなす」必要に迫られています。定型業務を自動化して、人間は付加価値の高い仕事に集中する——この流れは「あったらいいな」ではなく「やらなければならない」課題になっています。

すでに動き始めている企業たち

IT調査会社ガートナーは、AIエージェント(エージェント型AI)を「2025年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の一つに挙げています【1】
また、UiPath社とIDCの共同調査(2025年8月)によると、国内大手企業の約40%がすでにAIエージェントを導入済みで、52%が今後12カ月以内に導入予定と回答しています【2】。「まだ早いかな」と感じている間に、先行企業は着々と成果を出し始めています。


AIエージェントとは何か

従来のLLMとの違い

ChatGPTをはじめとする生成AIは、非常に便利です。
質問すれば数多の情報源を参照して答えてくれますし、文章の下書きも作ってくれます。ただし、ChatGPTには「自ら動けない」という制約があります。

「来週の会議資料を作って」とお願いしても、「こんな構成で作るといいですよ」とアドバイスはくれますが、実際にファイルを作って関係者に送ってくれるわけではありません。社内システムにログインしてデータを取ってきてくれるわけでもない。

つまり、ChatGPTは「聞けば答えてくれる物知りな相談相手」であって、「タスクをまるごと任せられるアシスタント」ではないのです。

AIエージェントは、この壁を越えました。
目標を伝えると、自分で情報を集め、計画を立て、手を動かして結果を出すところまでやってくれます。「仕事を任せたら、最後までやってくれるアシスタント」——それがAIエージェントです。

RPAとの違い

「業務の自動化」というと、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を思い浮かべる方もいるでしょう。

RPAは、人間が設定した手順をそのまま正確に繰り返すものです。
「Excelのこのセルをコピーして、このシステムに貼り付けて、保存ボタンを押す」という手順書通りの作業を、ロボットが代行します。定型作業の自動化には有効ですが、想定外の状況には対応できません。

AIエージェントは「手順」ではなく「目的」で動きます。
「この請求書を処理して」と伝えると、目的を理解した上で必要な作業を自分で判断します。画面レイアウトが変わっても、「請求金額を入力する欄はどこだろう」と自分で探して対応できる可能性があります。

RPAは「手順が完全に固定された作業」向き、AIエージェントは「判断を伴う作業」向きと考えてください。


AIエージェントの仕組み

AIエージェントが「自分で考えて動ける」のはなぜでしょうか。
その仕組みを理解すると、「どんな仕事なら任せられるか」が見えてきます。

AIエージェントの動作は、以下の4つのステップで構成されています。

ステップ1:知覚(状況を把握する)

与えられた目標と現在の状況を理解します。
「顧客Aへの提案資料を作って」という指示を受けたら、顧客情報、過去のやり取り、今回伝えるべき内容などを集めます。人間が新しい仕事を任されたとき、まず状況を把握するのと同じです。

ステップ2:推論(計画を立てる)

何を、どの順番で、どうやるかを考えます。
「まず顧客の業界動向を調べて、次に自社商品で合うものを探して、過去の成功事例を参考に構成を考えよう」——こうした段取りを自分で組み立てます。

ステップ3:実行(行動する)

計画に従って実際に作業します。
Web検索、データベースからの情報取得、ファイル作成、メール送信など、必要なツールを使い分けて実行します。

ステップ4:学習(改善する)

結果を振り返り、次回に活かします。
うまくいった方法は記憶し、失敗パターンは修正する。学習機能を持つAIエージェントでは、使うほど精度が上がっていきます。

この「知覚→推論→実行→学習」のサイクルを回すことで、複雑な仕事も段階的にこなしていきます。


AIエージェントが得意な仕事の特徴

活用シーンを見る前に、「そもそもAIエージェントはどんな仕事が得意なのか」を押さえておきましょう。
自社の業務が当てはまるかを考えながら読んでみてください。

特徴①:繰り返し発生する定型業務

AIエージェントが最も力を発揮するのは、毎日・毎週のように繰り返し発生する業務です。
1回あたりの作業時間が短くても、積み重なれば大きな効果になります。逆に、年に数回しか発生しない業務は、AIエージェントを設定する手間のほうが大きくなることもあります。

特徴②:手順やルールがある程度決まっている

「こういう場合はこう対応する」というルールが明確な業務ほど、AIエージェントは正確に動けます。
完全にマニュアル化されている必要はありませんが、「聞かれれば説明できる」程度にルールが存在していることが前提です。毎回ゼロから判断が必要な業務は、現時点では人間が担うべき領域です。

特徴③:複数の情報源やツールをまたぐ

AIエージェントの強みは、複数のシステムやデータソースを横断して作業できる点です。
「Aのシステムから情報を取得して、Bのデータベースと照合し、Cのフォーマットで出力する」——こうした作業は人間がやると手間がかかりますが、AIエージェントなら一気通貫で処理できます。

逆に、一つのツール内で完結する単純作業であれば、従来のRPAやマクロで十分な場合もあります。


AIエージェントの活用シーン

上記の特徴を踏まえて、具体的にどんな業務で活用されているのか、実際の導入企業の事例とともに3つのシーンをご紹介します。

活用シーン①:議事録作成・会議関連業務

会議が終わった後の議事録作成は、慣れている人でも30分程度、長い会議なら1時間以上かかることもあります。

AIエージェントを使うと、会議の録音データを渡すだけで、発言内容の文字起こしから、要点整理、決定事項と未決事項の分類、次回アクションの抽出まで自動で行います。さらに進んだ活用では、議事録の内容を踏まえて「提案資料の骨子」まで作成することも可能です。

【事例】KDDI「議事録パックン」

KDDIアジャイル開発センター株式会社が開発した営業支援ツールです。
会議の録音データから議事録を自動生成するだけでなく、AIエージェントが人間の指示なしに以下の流れを自律的に実行します。

①議事録を分析 
②顧客の課題を抽出
③Webで関連情報を調査
④社内商材DBと照合 
⑤ 提案骨子を自動作成

導入効果

  • 議事録と提案書の作成時間を最大1時間短縮
  • 「そのまま営業日報に使えるレベル」(現場の声)
  • 「提案材料を探す手間が減り、どう提案するかに力をさけるようになる」

単なる時間短縮だけでなく、「作業」から解放されて「考える仕事」に集中できるようになった——これがAIエージェント導入の本質的な効果です。


活用シーン②:問い合わせ対応

「〇〇のやり方を教えてください」「△△の申請フォームはどこですか」 毎日のように届く、同じような問い合わせ。
この前も同じ質問に答えたな」と思うことも多いのではないでしょうか。

AIエージェントを導入すると、問い合わせが届いた時点で内容を分析し、過去の対応履歴やFAQを参照して回答します。「この問い合わせは複雑だから人間に任せよう」と判断したら、担当者に引き継ぎます。

【事例】KDDI「auチャットサポートAIエージェント」

KDDIは2025年11月、コンタクトセンターにAIエージェントを導入しました。

auチャットサポートでは約80%の問い合わせをAIチャットボットが処理していますが、残り20%の複雑な質問(月間約16万件)は人間が対応しています。一般的なRAG(検索拡張生成)では、こうした難易度の高い質問への回答精度は約20%にとどまっていました。

新たに導入されたAIエージェントは、以下の仕組みで回答精度を大幅に向上させています。

  • 過去の応対履歴から類似事例を自動抽出
  • 応対パターンを構造化して学習
  • 不足情報を自律的に収集し、ファクトチェックを実行

導入効果

  • 応対時間を約70%削減(見込み)
  • 回答精度が約90%に向上(従来の約20%から大幅改善)
  • スタッフの応対品質が均一化

AIエージェントが「調べる」「確認する」「裏付けを取る」という作業を自律的に行うことで、人間のスタッフは顧客とのコミュニケーションに集中できるようになります。


活用シーン③:製品開発・技術継承

製造業や開発部門では、ベテランの専門知識をいかに次世代に引き継ぐかが課題です。
膨大な設計資料から必要な情報を探すだけでも相当な時間がかかります。AIエージェントを活用すると、複数の専門分野にまたがる質問に対して関連データを横断検索し、統合した回答を提供できます。

【事例】トヨタ自動車「O-Beya(大部屋)」

トヨタ自動車は、パワートレーン開発部門向けにAIエージェントシステム「O-Beya」を開発し、2024年1月から運用しています。

「大部屋」とは、トヨタが長年実践してきたエンジニアが一つの部屋に集まり技術を共有する仕組みのことで、O-Beyaは、この「大部屋」をAIで再現したシステムです。

現在9つの専門AIエージェント(振動、燃費、エンジン、バッテリー、規制など)が実装されており、質問を入力すると関連するエージェントが連携して回答を生成します。

システムの特徴

  • 過去の設計報告書、最新の法規制情報、ベテランの手書き文書まで参照
  • 質問内容に応じて複数の専門エージェントが協調して回答

導入効果

  • 約800人が活用、月間数百回の利用で開発スピードが向上
  • ベテランへの個別問い合わせが不要に、情報検索時間を大幅短縮
  • 24時間365日、世界中の拠点から専門知識にアクセス可能に

ベテランエンジニアの多くが定年を迎える中、AIエージェントを通じて専門知識を次世代に継承する——単なる効率化ではなく、企業の競争力を維持するための戦略的な取り組みです。


AIエージェントに向かない業務

AIエージェントは万能ではありません。
導入前に「できないこと」も理解しておく必要があります。

向かない業務①:正解がない創造的な判断

「新規事業のアイデアを考える」「この状況でどちらの戦略を取るべきか」といった、正解のない創造的・戦略的な判断は苦手です。
情報を整理して選択肢を提示することはできますが、最終的な意思決定は人間が行う必要があります。

向かない業務②:ルールが曖昧な業務

「こういう場合はこう対応する」というルールが明確でない業務は、AIエージェントも正確に動けません。
「ケースバイケースで判断している」「ベテランの勘に頼っている」という業務は、まずルールを言語化する作業が先に必要です。

向かない業務③:間違いが許されない最終判断

AIエージェントの出力には、誤りが含まれる可能性があります。
医療診断や法的判断など、間違いが重大な結果につながる領域では、AIはあくまで「補助」として使い、最終確認は人間が行う運用が必要です。

AIエージェントは「人間の仕事を奪う」ものではなく、「人間がより重要な仕事に集中できるよう、定型業務を引き受ける」ものと考えてください。


導入を検討する際の判断軸

ここからは、自社での導入を検討する際の実務的な視点をお伝えします。
AIエージェントは導入すれば成果が出るものではなく、「どの業務に導入するか」の見極めが成否を分けます。

判断軸①:業務の頻度と工数はどれくらいか

効果が出やすいのは、頻度が高く、かつ一定の工数がかかる業務です。

毎日発生する作業なら、1回10分の短縮でも月換算で数時間の効果になります。逆に、年に数回しか発生しない作業は、AIエージェントを設定・調整する手間のほうが大きくなる可能性があります。

見極めのポイント

まず社内で「時間がかかっている業務」「繰り返しが多い業務」をリストアップしてみてください。
その中で「毎日・毎週発生する」「1回あたり30分以上かかる」ものがあれば、優先度の高い候補です。


判断軸②:ルールは言語化されているか

AIエージェントは、参照できるルールやデータがあって初めて正確に動けます。
「この業務、マニュアルはありますか?」と聞いて「ある」と答えられる業務は良い候補です。

「マニュアルはないが、ベテランに聞けばわかる」という業務は、まずルールの言語化から始める必要があります。これは手間に感じるかもしれませんが、ルールを整理する過程で業務の無駄が見つかることも多く、AIエージェント導入の有無にかかわらず価値があります。

見極めのポイント

「なぜその判断をしたのか」を担当者に聞いたとき、明確に説明できる業務は自動化がしやすいです。
「なんとなく」「経験で」という回答が多い業務は、まず判断基準の整理が先です。


判断軸③:参照するデータは整備されているか

AIエージェントの性能は、参照するデータの質と量に大きく左右されます。マニュアルが古い、情報が複数の場所に散在している、フォーマットがバラバラといった状態では、AIも正しく判断できません。

見極めのポイント

過去の対応履歴、FAQ、業務マニュアルなど、AIが参照すべき情報が一元管理されているかを確認してください。
されていない場合は、導入前にデータ整備の工程が必要です。


判断軸④:効果を数字で測れるか

「作業時間が〇分から△分になった」「対応件数が〇件から△件に増えた」のように、効果を数字で確認できる業務から始めると、成果が見えやすく、社内の理解も得やすくなります。

見極めのポイント

導入前に「何をもって成功とするか」を決めておくことが重要です。
「なんとなく楽になった」では、継続投資の判断ができません。「月末の経理処理時間を50%削減」「問い合わせの初回対応時間を平均30分短縮」など、具体的な目標を設定してください。


判断軸⑤:失敗しても影響が小さいか

最初の導入先は、「失敗しても影響が限定的」な業務を選ぶのが鉄則です。
いきなり基幹業務に導入して問題が起きると、修正も困難で、社内のAIへの信頼も損なわれます。

見極めのポイント

議事録作成や社内問い合わせ対応など、外部への影響が少なく、人間がすぐにリカバリーできる業務が最初の導入先として適しています。


まとめ

AIエージェントは、人間の仕事を奪うものではありません。むしろ、「本当にやるべき仕事」に集中するための味方です。

定型業務に追われて本来の仕事ができない…。
そんな状況を変える一歩として、まずは自社の業務を見つめ直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

「どの業務から始めればいいか」「自社の場合どうなるか」などのご質問・ご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。

タグ:
AIエージェントDX化業務効率化ChatGPT生成AIブログ
読了時間: 5分