2025年12月8日
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「データはあるのに活かせない」とお悩みの方へ。 データ基盤(DWH)で始めるデータ活用の第一歩

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こんにちは!シェルシステムです。

みなさんは、データ活用に関して、こんな課題はありませんでしょうか?

営業部門が持つ顧客接触履歴、製造部門が記録する生産ログ、人事部門が管理する勤務データなど、データは日々蓄積されているのに、それぞれが独立したシステムに散在し、活用されないままになっている。
実は、多くの企業がこの状況に直面しており、社内に蓄積された膨大なデータを活用しきれずにいます。

本記事では、それらの眠っているデータを資産に変えるための具体的な仕組みと、段階的な活用ステップを分かりやすく解説します。


1. あなたの会社にも眠る「宝の山」

まず、多くの企業で活用されずに眠ってしまっているデータの具体例を見ていきましょう。

眠っているデータの例



これらのデータは日々蓄積されているにもかかわらず、なぜ活用されないのでしょうか。

その最大の理由は、データが社内の様々な場所に、異なる形式で散在しているためです。 これらのデータを活用できていないことで、大きな機会損失を被っている可能性があります。

例えば、EC・小売企業では、顧客の購買パターンが見えないため、最適なタイミングでの提案ができず、リピート購入の機会を逃しています。
製造業では、機械の故障兆候を事前に捉えられず、突発的なラインの停止による生産ロスが発生します。
サービス業では、解約しそうな顧客の早期発見ができず、既存顧客の流出を防ぐことができません。

つまり、眠っているデータとは、単に「使われていないデータ」ではなく、「活用すれば大きな価値を生むはずなのに、その価値を引き出す仕組みがないために、機会損失として消えていくデータ」なのです。


2. データを価値に変える「仕組み」:データ基盤の重要性

散在したデータを価値に変えるには、それらを一箇所に集め、誰もが使える形に整える「仕組み」、すなわちデータ基盤の構築が不可欠です。

データ活用の心臓部「DWH(データウェアハウス)」とは?

データ基盤の中核をなすのが、DWH(データウェアハウス)です。
これは日本語で「データの倉庫」と訳される通り、分析に利用するためのデータを保管しておくための専用のデータベースです。

日々の業務で使われる通常のデータベース(例えば、販売管理システムのデータベースなど)は、取引データを迅速に記録・更新することに最適化されています。

それに対してDWHは、分析を目的として設計されている点が根本的に異なります。社内の様々なシステムから集められたデータを、分析しやすい形で整理・統合し、長期間にわたって蓄積します。

DWHが持つ主な特徴は以下の通りです。

  • 分析に特化した構造: 複雑な集計や多角的な分析を高速に実行できるように設計されています。
  • データの統合: 営業、マーケティング、生産など、部門ごとに異なるシステムで管理されているデータを統合します。これにより、部門を横断した分析が可能になります。
  • 時系列でのデータ蓄積: 過去から現在までのデータを時系列で蓄積するため、「昨年対比」や「過去数年間のトレンド」といった時間軸での分析を得意とします。

このように、DWHは社内に散在するデータを一元的に管理し、分析可能な状態に整える役割を担います。これにより、データに基づいた正確な現状把握と、信頼性の高い将来予測を行うための土台を築くことができるのです。

どうやってデータを集約するのか?

では、分析の土台となるこのDWHは、どのようにして作られるのでしょうか。

ただ「倉庫」を用意するだけでは、データは貯まっていきません。
社内の基幹システム、営業が使うSaaSツール、各担当者が管理するExcelファイルなど、バラバラの場所に散在するデータを、DWHという一つの場所に集める必要があります。

この作業を毎回手作業で行っていたら、膨大な時間がかかる上に、ミスも発生しやすくなります。
そのため、DWHを価値あるものにするには、様々なデータソースから自動的にデータを集め、常に最新の状態に保つ仕組みが不可欠です。

その役割を担うのが、ETL(Extract, Transform, Load)と呼ばれる一連の処理です。

DWHのイメージ


1.  Extract(抽出): 様々なデータソースから必要なデータを抽出します。
2.  Transform(変換): 抽出したデータを分析しやすいように、形式を整えたり(例:「株式会社」と「(株)」を統一)、不要な情報を取り除いたり(データクレンジング)、計算を加えたりします。
3.  Load(格納): 変換・加工されたデータをDWHに格納します。

このETL処理を定期的に自動実行することで、DWHには常に最新の、整理されたデータが蓄積されていくのです。

なぜデータを集約するのか?:DWHがもたらす3つのメリット

データをDWHに集約することで、企業は具体的にどのような価値を得られるのでしょうか。
ここでは、その代表的な3つのメリットを解説します。

1. 全社で「信頼できる唯一のデータ」を共有できる
部門ごとにデータの管理方法が異なると、「営業部とマーケティング部で売上の数字が違う」といった混乱が生じがちです。

DWHを構築することで、社内のデータが統一された基準で一元管理され、誰もが同じ「信頼できる唯一のデータ」にアクセスできるようになります。

これにより、数字の正しさを議論する無駄な時間がなくなり、データに基づいた迅速で正確な意思決定が可能になります。

2. 部門の壁を越えた、新しいインサイトを発見できる
データが部門ごとに分断されている状態では、部門をまたいだ分析は困難です。

例えば、「どの広告が実際の受注に繋がったのか」を分析するには、マーケティングの広告データと営業の受注データを組み合わせる必要があります。

DWHは、こうした部門の壁を取り払い、データを統合するための受け皿です。これにより、これまで見えなかった新たな相関関係やビジネスチャンスを発見できます。

3. データ集計作業を自動化し、分析業務に集中できる
データ分析の現場では、分析そのものよりも、手作業でのデータ収集や加工作業に大半の時間が費やされていることが少なくありません。

DWHは、この面倒なプロセスを自動化します。
担当者はデータ集計作業から解放され、分析結果からビジネス価値を生み出すという、本来の付加価値の高い業務に集中できるようになります。


このように、DWHという仕組みを整えることで、初めてデータは組織全体の資産となり、真の価値を発揮し始めるのです。


3. データ基盤が実現する、業種別・成功事例

この「データ基盤」という仕組みを整えることで、どのような成果が生まれるのでしょうか。業種別の成功事例を見ていきましょう。

事例1:EC・小売業界 - インテリア雑貨企業がリピート率を5.4%向上
EC販売と全国に店舗展開しているインテリア雑貨企業では、購入履歴、サイト内での閲覧・検索ログ、会員属性データをDWHに統合しました。

これまで、データの集計・加工に工数がかかり、詳細な顧客分析ができていませんでしたが、ダッシュボードを導入することで、各種データを同条件で分析できる環境を構築。

これにより、商品別や顧客属性ごとの売上分析、顧客別の購入回数といった、これまで見えなかったインサイトを発見することが可能になりました。その結果、データに基づいた施策を継続的に実施することで、新規顧客数の増加とともに、リピート購入率を5.4%向上させることに成功しました。

参考資料: KUROCO「リピート率+5.4%を実現!EC販売と全国に店舗展開しているインテリア雑貨企業の顧客分析による成果創出」

https://kuroco.team/case/works/retail-a/

事例2:製造業 - 産業用冷凍機メーカーが予知保全で計画外停止を削減

産業用冷凍機を製造する前川製作所では、従来、定期点検に依存していたため、冷凍機の突発停止が発生すると製造ラインの停止や品質劣化など、甚大な影響を及ぼしていました 。

特に初期段階での故障兆候を捉えることが困難で、事後対応による損失が課題でした。 YE DIGITALとの協業により、機械学習を活用した故障予知システムを導入。センサーから得られる稼働データやエラーログをDWHに収集し、AIモデルで分析することで、時系列データの学習により、人間では気づきにくい微細な変化パターンを捉えられるようになりました。

その結果、故障発生の1週間前には兆候を検知できるようになり、計画的なメンテナンスが可能に。計画外停止を大幅に削減し、食品工場などの重要設備において安定した冷却機能の維持を実現しています。

参考資料: ニューラルオプト「予知保全の導入事例15選」

https://neural-opt.com/predictive-maintenance-cases/

4. 失敗しないためのデータ基盤構築

では、何から手をつけるべきなのでしょうか。
成功への最短ルートは、小さく始めて着実に成果を積み上げることです。

実装ロードマップのイメージ


データ基盤のプロジェクトは、その目的が曖昧なまま進めると、PoC疲れや、使われないシステムの構築といった失敗に陥りがちです。
ここでは、そうした失敗を避け、着実に成果を出すための現実的な3つのステップを紹介します。

ステップ1:ビジネス課題の定義とデータの棚卸し
データ活用の第一歩は、データを見ることからではなく、「ビジネス上のどんな課題を解決したいか」を明確に定義することから始まります。
例えば、「顧客のリピート率を10%向上させたい」「製品の不良品率を5%削減したい」といった、具体的で測定可能な目標を設定します。

目的が定まったら、次はその目的を達成するために「どのデータが必要か」を考え、社内に存在するデータを棚卸しします。

営業部門が持つ顧客情報、製造部門の生産ログ、マーケティング部門の広告データなど、どのシステムに、どのような形式でデータが存在しているのかを洗い出します。
この段階で、目的達成に必要なデータが不足していることが判明する場合もあります。

ステップ2:スモールスタートで価値を実証する(PoC)
最初から全社規模の完璧なデータ基盤を目指すのは、失敗の元です。
まずは、ステップ1で定義した課題の中から、最も成果が出やすく、ビジネスインパクトの大きいテーマを一つに絞り、小規模なパイロットプロジェクト(PoC: Proof of Concept)を実施します。

例えば、「顧客のリピート率向上」というテーマであれば、まずはECサイトの購買履歴と顧客データだけでも良いのでDWHに集約し、BIツールで可視化・分析してみます。

ここで、「特定の商品を購入した顧客は、30日以内に再購入する確率が高い」といった具体的なインサイトを得て、小さな施策に繋げることが重要です。この「データを使えば、本当にビジネスが改善する」という小さな成功体験が、経営層や関連部門の理解を得て、プロジェクトを全社的に推進するための強力な拠り所となります。

ステップ3:横展開と改善サイクルの確立
パイロットプロジェクトで得られた成功体験と技術的なノウハウを元に、他の部門や他のテーマへと活用範囲を横展開していきます。

DWHに接続するデータソースを増やし、分析の幅を広げていくと同時に、利用者からのフィードバックを継続的に収集し、ダッシュボードの改善や新たな分析軸の追加など、データ基盤をより使いやすいものへと育てていきます。

重要なのは、データ基盤は「作って終わり」のシステムではないということです。

ビジネスの変化に合わせて、常に改善を繰り返していく必要があります。
利用部門を巻き込みながら、データを見て、施策を考え、実行し、その結果をまたデータで評価するという「改善サイクル」を組織に根付かせていくことこそが、データ活用の最終的なゴールと言えるでしょう。

まとめ:データ活用でビジネスの未来を創造する

本記事でご紹介したように、データ活用はもはや一部の大企業だけのものではありません。社内に散在するデータを「データ基盤(DWH)」という仕組みに集約し、段階的なアプローチを取れば、どのような企業でも、眠っているデータをビジネス成長のエンジンに変えることができます。

もし、自社のデータ活用について「何から始めれば良いかわからない」「具体的な進め方を知りたい」とお考えでしたら、ぜひシェルシステムにご相談ください。最適なデータ基盤の構築から活用まで、一貫してサポートいたします。

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