旅行計画はもう不要？ 2025年、旅の常識を書き換えるAIアシスタント最前線と未来予測
こんにちは！シェルシステムです。
旅行の計画って、ワクワクしますよね。でも、正直なところ、航空券やホテルの比較、口コミサイトのチェック、観光ルートの検討…と、やることが多すぎて「ちょっと面倒だな」と感じることはありませんか？
でも、そんな時代はもう終わりかもしれません。
この記事では、この「旅行計画の自動化」という革命の最前線で何が起きているのか、具体的な最新サービスを紐解きながら、解説していきます。
はじめに：旅行計画にAIがもたらす変化
かつて、旅の計画は一冊の分厚いガイドブックをめくることから始まりました。限られた情報の中から、旅行代理店のカウンターで専門家と相談しながら旅程を組み立てるのが「常識」でした。
2000年代に入り、インターネットが普及すると、その主役は無数のウェブサイトへと移り変わります。ExpediaやBooking.comといったOTA（Online Travel Agent）の台頭により、誰もが自宅のPCから航空券やホテルを比較・予約できる時代が到来し、旅行計画は「検索とクリック」の作業へと変貌を遂げました。
しかし、この「自由」は同時に「情報過多」という新たなストレスを生み出します。「最高の体験」を求めて、無数の予約サイト、レビュー、ブログ記事を何時間も渡り歩く…そんな経験は、多くの人にとって身に覚えがあるのではないでしょうか。
そして2025年、私たちは今、旅行計画における第三の、そして最も大きなパラダイムシフトの入り口に立っています。それが、AI（人工知能）による「旅行計画の自動化」という静かなる革命です。
本記事では、この革命の最前線で何が起きているのか、具体的な最新サービス事例を紐解きながら、私たちの旅がどのように進化していくのか、その深層と未来のトレンドを徹底解説します。
2025年、旅行テックの最前線で起きている「3つの変化」
個別のサービスを見る前に、現在進行形で起きている大きな変化を3つのキーワードで整理します。これらは単なる技術トレンドではなく、旅行という体験そのものの価値観を揺るがす大きな変化です。
1. 「検索」から「実行」へ
AIが最適な選択肢を提案するだけでなく、予約や決済といった具体的なアクションまで自律的に代行する「エージェント化」が加速しています。ユーザーはもはや、AIが提示したリンク先に飛んで自分で予約する必要がなくなります。この動きを象徴するのがGoogle AI Modeで、レストラン予約やチケット手配を自動化し、将来的にはフライト・ホテル予約も視野に入れています。
2. 「超パーソナライズ」の深化
過去の好みだけでなく、領収書やカレンダーといった個人の文脈（コンテクスト）を深く理解し、よりパーソナライズされた提案を実現します。AIはあなたのオフラインでの行動履歴から「あなたが本当に好きなもの」を学習し、まだ言葉にできていない潜在的なニーズを掘り起こします。例えば、Mindtripは領収書から旅程を自動生成する機能を開発し、iWanderは個人の好みに合わせたオーディオツアーを提供しています。
3. 「BtoB領域」への浸透
旅行者向けのサービスだけでなく、ホテルや航空会社など、業界の裏側を支える業務効率化ツールとしてもAI活用が本格化しています。深刻な人手不足の解消と、より高度なサービス品質の実現という、二つの大きな課題を同時に解決する切り札として期待されています。具体例として、Runnr.aiはWhatsAppでのゲスト対応を自動化し、ビジネス出張に特化したNavanはサポート業務の50%以上をAIで解決しています。
注目のAI旅行サービス
では、具体的にどのようなサービスが登場しているのでしょうか。
ここでは、特に注目を集める4つのユニークなAIサービスを紹介します。
1. Google AI Mode
Google検索に統合された、旅行計画から予約までをワンストップで担うAI機能群です。ユーザーが「週末、温泉に行きたいな」といった曖昧なリクエストを投げかけるだけで、Googleの持つ膨大な情報（検索、マップ、Gmailなど）を総動員し、最適な旅行プランを提案・実行します。
- 何ができる？
- 旅程作成 (Canvas): フライト、ホテル、アクティビティ情報を一元管理し、移動時間や予算を考慮して旅程を自動で最適化します。
- 格安航空券の提案 (Flight Deals): 自然言語で希望を伝えるだけで、AIが最適な航空券を探し出します。
- 予約の実行 (Agentic AI): レストラン予約やイベントチケット購入などを、ユーザーに代わってAIが実行します。
- ここがポイント
最大の強みは、Googleの広範なエコシステムと連携することで、ユーザーの文脈を深く理解できる点です。これにより、複数のアプリやサイトを行き来する手間をなくし、圧倒的な利便性を提供します。この動きは、旅行業界におけるGoogleのプラットフォーマーとしての地位をさらに強固にする可能性を秘めています。
2. Mindtrip：あなたの「好き」を、領収書から見つけ出す
ユーザーがアップロードした領収書や予約確認メールをAIが分析し、個人の隠れた嗜好を学習して、パーソナライズされた旅行プランを提案するユニークなスタートアップです。
- 何ができる？
- 消費傾向の分析: レストランやショップの領収書をOCR（光学的文字認識）で読み取り、「どんな店で、何に、いくら使ったか」を分析します。
- 旅行スタイルの学習: 過去の予約確認メールから、ホテルのグレードや航空会社の好みなどを学習します。
- 潜在ニーズに基づく提案: これらの分析結果から、ユーザー自身も気づいていない「本当に好きなもの」を掘り起こし、次の旅行先やアクティビティを提案します。
- ここがポイント
「レビュー評価」ではなく「リアルな消費行動」という信頼性の高いデータを基にパーソナライズを行う点が画期的です。これにより、「評価が高いから」ではなく「自分の価値観に合うから」という、より本質的な旅の選択を可能にします。オフラインの行動が、次の旅のコンパスになるという新しい体験を提供しています。
3. iWander：旅先で出会う、あなただけの専属AIガイド
旅行者の興味やその場の状況に応じて、リアルタイムでパーソナライズされたオーディオガイドを生成するサービスです。旅行の「計画」だけでなく、「体験」そのものの質を高めることに注力しています。
- 何ができる？
- リアルタイムの音声ガイド: GPSと連動し、今いる場所の観光スポット情報を自動で、かつ自然な音声で解説します。
- 解説のカスタマイズ: ユーザーの興味（例：「建築史」「グルメ」）に応じて、解説の切り口や深さをダイナミックに変更します。
- インタラクティブな対話: 「この建物を設計したのは誰？」といった質問に答えたり、関連するトリビアを披露したりと、双方向のコミュニケーションが可能です。
- ここがポイント
画一的なガイドブックから解放され、まるで知識豊富な友人と旅しているかのような、没入感の高い体験を提供します。RAG（Retrieval-Augmented Generation）という技術を活用し、膨大な情報の中からユーザーに最適な情報を引き出して自然な解説を生成する点が特徴です。観光地での体験価値を最大化する新しいソリューションとして注目されています。
4. Runnr.ai：ホテル業界の「縁の下の力持ち」
WhatsAppなどの日常的なメッセージングアプリを通じて、ホテルゲストからの問い合わせ対応やリクエスト処理を24時間自動化する、BtoB向けのAIコンシェルジュサービスです。
- 何ができる？
- 24時間対応の自動応答: 「タオルを追加で」「Wi-Fiのパスワードは？」といった定型的な問い合わせに多言語で即座に対応します。
- タスクの実行と連携: ルームサービスやレストラン予約などのリクエストを、ホテルの基幹システム（PMS）と連携して処理します。
- スマートなアップセル: ゲストの属性や過去の利用履歴に基づき、スパの割引など、パーソナライズされた提案を行います。
- ここがポイント
深刻な人手不足に悩むホテル業界の生産性を劇的に向上させるソリューションです。定型業務をAIに任せることで、ホテルスタッフはより人間的な「おもてなし」に集中できるようになります。ゲストにとっては、電話が繋がらないといったストレスなく、使い慣れたアプリで気軽にリクエストできる利便性があります。業界の裏側を支え、顧客満足度と収益性の両方を高める重要な役割を担っています。
専門家が読み解く今後の流れ：「AIネイティブ」が業界地図を塗り替える
旅行業界の権威あるメディア「PhocusWire」は、2026年に注目すべきスタートアップ25社のうち、実に60%が「AIネイティブ」であると報告しています 3。これは、既存のサービスにAI機能を後付けするのではなく、最初からAIの活用を前提としてビジネスモデルを構築する企業群が、今後の業界をリードしていく可能性を示唆する非常に重要なデータです。
Phocuswrightのシニアマネージャー、マイク・コレッタ氏は、現在の市場環境を次のように分析しています。
「資金調達はここ数年で最低水準に落ち込んでいるが、AIネイティブの創業者たちは生産性の飛躍的な向上を報告している。資本はごく一部の企業に集中し、投資家は『数打てば当たる』から『実力を証明したものに支払う』へとシフトしている。勝者となるのは、レガシーなシステムを飛び越え、次世代の流通（エージェント間連携）に直接接続できるエージェント対応サービスを構築するAIネイティブ企業だろう」
[3] PhocusWire. (2025, November 10 ). Presenting the Hot 25 Travel Startups for 2026. Retrieved from
彼の分析が示すように、AIネイティブ企業は、古いシステムや業界のしがらみに縛られることなく、最新のAI技術を駆使して、これまで不可能だったレベルのパーソナライゼーションや自動化を実現します。厳しい資金調達環境は、むしろ本質的な価値を持つ企業だけを選別するフィルターとして機能しており、ここで生き残ったAIネイティブ企業が、数年後の旅行業界の勢力図を大きく塗り替えている可能性は非常に高いと言えるでしょう。
おわりに：これからの旅は、AIとの「対話」で創り上げる
AIは私たちの旅行の計画と体験の方法を、根本から変えようとしています。
これからの旅行計画の主役は、AIとの「対話」になるでしょう。
AIは、私たちの曖昧な願望を形にし、自分でも気づかなかった選択肢を提示してくれる最高のパートナーです。
しかし、その提案を鵜呑みにするのではなく、「なぜこの場所なの？」「もっと静かなホテルはない？」と問いを投げかけ、対話を重ねることで、プランはより深く、自分らしいものへと磨かれていきます。
参考文献
[1] Google Blog. (2025, November 17). New ways to plan travel with AI in Search. Retrieved from
[2] DeskrexAI Research. (2025, January 16 ). 観光業の生成AI・AIスタートアップの事例7選. Retrieved from
[3] PhocusWire. (2025, November 10 ). Presenting the Hot 25 Travel Startups for 2026. Retrieved from